新旧交代の朝
2024年8月某日――。
各地では異例の猛暑日が続き、ニュースでは台風10号の接近に伴う航空機や新幹線の計画運休について連日報じられる中、ここ株式会社サインアーテックの本社工場では、歴史的な機械入れ替え作業が静かに、しかし着実に進行していました。
長年、サインアーテックの生産を支え続けた「VUTEk5000r」がついに引退し、最新鋭の「VUTEk Q5r」へとバトンタッチすることが決まりました。このプロセスは単なる機械の入れ替えではなく、サインアーテックが次世代への生産体制へと進化するための挑戦なのです。
工場内は、この大きな節目を前に、スタッフ一同やや緊張しながらも期待に胸を膨らませていました。今回はその導入当日の様子と、VUTEk Q5rの高度な性能についてご紹介します。
長年の功労者「VUTEk5000r」の引退
約10年間にわたり、VUTEk5000rはサインアーテックの5M主力機「VUTEk5500LxrPro」に次ぐ準主力機として、数々の案件を支えてきました。大型背景幕、量産ものバナーなど、その用途は多岐にわたり、当社のビジネスを支える重要な存在でした。本当にハードに働いてくれたのです。
導入当時、それまでの旧世代の5M機と比較しても、その印刷精度と安定性は際立っており、肌の色調や滑らかなグラデーションの再現性において高い評価を得ていました。しかし年月と共に老朽化は進み、頻繁なメンテナンスとインクコスト、そして担当現場スタッフの負担は日に日に増大していったことも事実です。
「もはやこれまでかーー。」時代の変化と共に技術革新への移行は避けられません。まもなく廃棄される運命のVUTEk5000rに向けて、最後のメンテナンスを施すスタッフには多少の寂しさもあったはずです。しかし、次の世代を担う新機種への期待感は、それを上回っていたのでした。
こいつが新型か!
機械が稼働していない静まり返った工場内では、すでに設置のための準備作業が始まっています。搬入口には黄色いクレーン車が最新鋭機の到着を待っています。
工場内に入ると、RIP用のモニターも排気ダクトも外され、まるで死んでしまったかのような5000rが見えます。「真冬に、寒くて赤いサイドカバーに抱きついたこともあったなー。」などと思い出に浸っているところへ、シャッターの開いた搬入口外に大型トラックがバックで現れました。
大型トラックでやってきた最新鋭機は、養生されているためにそのスタイリッシュな姿はまだ確認できませんが、まるで新型モビルスーツか何かのように荷台に鎮座しています。
大型出力機のひしめき合う工場内にスペースを確保し、搬入可能になるまでのしばらくの待機時間を経て、重量物運搬用電動ローラーに乗せられ工場内に吸い込まれていく最新鋭機。
5000rの横をかなりゆっくりとしたスピードですり抜けていく様子は、新旧交代の象徴的な瞬間でした。最新鋭機はまだ養生に覆われて姿を現してはいません。
設置作業では、わずかなズレも許されないためミリ単位の調整が求められます。専門の搬入業者さんと技術者の皆さんとで連携しながら、設置場所の確定、レベル調整、配線工事とスムースに作業は進んでいきます。
さらば!VUTEk5000r
引き続き運用を継続する「VUTEk5500LxrPro」が設置されていた位置は、搬入口から見て工場の一番奥でした。その位置が主力機が設置されるメインステージです。
「次期主役」に気を取られている間に、5000rは先ほど最新鋭機を運んできた大型トラックへの積み込み作業を終えようとしていました。
搬出の様子をカメラに収めるため急いで5000rの元へ。積み込み作業はもう完了間近です。搬入と違い、搬出(廃棄)作業の時間はとても早く感じられました。積み込みを程なく終えた5000rを載せた大型トラックは、工場敷地から走り去り程なく視界から消えてなくなりました。
「長い間ごくろうさまVUTEk5000r。」
ガルウィングのスタイリッシュ最新鋭機VUTEk Q5r!その脅威の性能
ついに養生を解いてその姿を現した「VUTEk Q5r」。従来機と比較してひと回り大きくなったその筐体は、前面と背面のロールが本体内側に内蔵された形の、いかにも現代的なフォルムをしています。
「継ぎ目が見当たらないけど、一体どこが前面の開口部なんだろう?」
不思議に思い開口部の境界を探しているうちに、なんと突然本体全面が開きはじめたのです。
「前面開口部全体が持ち上がるガルウィング方式なのか!!」
新たに導入された「EFI VUTEk Q5r」は、現在のインクジェット業界においても最高峰の性能を誇る5M幅対応のロールツーロール出力機です。従来機からは大幅な進化を遂げており、生産性、画質、効率性のすべてが次世代レベルに引き上げられています。
1. 圧倒的な生産性とスピード:最大642m2/時
VUTEk Q5rの生産スピードは驚異的で、最大642m2/時という出力を実現。これは業界内でもトップクラスの数値であり、これまでの印刷時間を劇的に短縮します。
①4Passモード:176m2/時での高精度出力
②5Passモード:145m2/時でも安定した品質
この生産力は大きなアドバンテージとなります。次々と排出される高品質なプリントメディアは、現場の作業効率を飛躍的に向上させることが期待できます。
2. 高解像度と先進のインク技術
VUTEk Q5rは最大1200dpiの高解像度と、EFI独自のUltraDrop™テクノロジーを採用しています。7plの超微細プリントヘッドによるマルチドロップの制御能力により、3ポイントの細かな文字まで正確に再現可能です。
①CMYKダブル出力:色の再現性がさらに向上
②白インク対応:マルチレイヤー出力で高付加価値を実現
③クリアコーティング:全表面保護トップコートと、選択部分のグロスおよびマット仕上げが可能
特にクリアコーティングは、屋外耐候性3年相当の保護性能を持ち、電飾FFなどの長期掲載メディアにおいてのニーズが期待されます。また、全面フルフラットコーティングにも対応しており、現場の手作業によるコーティングの手間を軽減します。
3. 後工程の効率化
VUTEk Q5rには、XY軸方向スリッター・カット機能、シワ検知機能などの先進機能が標準搭載されており、後加工に要する時間と労力を最小限に抑えます。
EFI独自のLED硬化技術により、低消費電力での安定した硬化プロセスが可能となり、環境負荷の低減にも寄与しています。これにより、高品質な出力を維持しながら、持続可能な生産環境を実現します。
次世代への進化を象徴するVUTEk Q5r
VUTEk Q5rは現在、既に本格稼働をスタート。安定稼働領域でいうと、毎時120~170m2もの生産力で短納期の、それも即日対応などの特急案件などもなんなく熟している状況です。毎時100m2超というのは、現実的にはなかなか安定して供給できるものではなく、やはりプリンタマシンの信頼性が長期的に見込めないと示せない領域であり、我々にとってはある意味においては夢の領域でもあるのです。
170m2/時というと、5M幅×50M巻のメディアを1時間半もかからずに巻き上げることが出来る計算ということになります。これは、従来のプリンタのおよそ3倍近いスピードにも到達しており、プリンタ当りの日産(8h/日計算)では、従来プリンタで5M幅×50Mで2本/日だったものが、5~6本/日も生産が可能になるという驚異的な数字を叩き出しています。
このQ5rのスピードは、もはや「弊害」すら出ています。あまりに早いために「加工セクションが追い付かない...」という悲鳴すら聞こえてきます。サインアーテックの最大の特徴でもある加工セクションは、やはり手仕事が多いためにこれはある意味では仕方のないことですね...。逆に、それくらいの圧倒的な生産力と言うことができるのではないでしょうか。
次の未来に向かって
VUTEk Q5rの導入は、サインアーテックが次のステージへと進化するための重要な一歩のひとつです。長年の功労者VUTEk5000rへの感謝を胸に抱きながら、新たなテクノロジーを最大限に活用し、品質・スピード・効率のすべてを向上させてまいります。
最新鋭機と共に、サインアーテックはこれからも皆様の期待に応え続ける企業として、成長を続けていきます。サインアーテックの未来に…どうぞご期待ください!
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